肺がん化学療法の目的と効果、副作用

 抗がん剤を使った化学療法は、特に手術のできない肺がんにおいて重要な治療です。副作用が強いイメージがありますが、最近はなるべく薬で予防するなど、患者さんのQOLを考えた治療が行なわれています。

肺がんの化学療法の目的

 肺がんでは、V期以降のステージになると基本的に手術は難しくなります。その時、放射線療法と並んで活用されるのが、抗がん剤を使った化学療法です。

化学療法は、抗がん剤を点滴(もしくは内服)することで、がん細胞にダメージを与える治療法になります。手術や放射線療法は、病巣だけに的を絞った「局所療法」ですが、化学療法は薬を全身に行き割らせる「全身療法」です。

そのため、肺にある病巣はもちろん、他の臓器に転移したがんにも働きかけることができ、腫瘍を縮小させる効果が期待できます。特に遠隔転移の見られる末期(W期)の肺がんでは、化学療法が単独で行なわれることが一般的です。

また手術のできるステージであっても、術後に化学療法を実施することがあります。

手術では、できる範囲で病巣を取り除きますが、目に見えないがん細胞が残ってしまう可能性もあるため、それがいずれ成長して再発しないよう、念のために抗がん剤で攻撃しておくのです。このような治療を「術後補助化学療法」といいます。

肺がんの化学療法でよく見られる副作用

 抗がん剤は、がん細胞の増殖の速さに着目して作られた薬です。がん細胞は正常な細胞よりも分裂するスピードが速いため、この性質を利用し、増殖の活発な細胞に効き目が現れるように作られています。

しかし正常な細胞の中にも、がん細胞と同様、増殖の速いものがあります。

たとえば血液を作る造血幹細胞や、髪の毛を作る毛母細胞、胃腸を守る粘膜細胞などです。抗がん剤によってこれらの細胞もダメージを受けてしまうと、以下のような副作用につながります。

骨髄抑制

造血幹細胞がダメージを受けたことによって、赤血球や白血球、血小板などが少なくなってしまう副作用です。貧血や悪寒、発熱、感染症にかかりやすくなるなどの症状が見られます。

消化器症状

胃腸の粘膜がダメージを受けたことによって、吐き気や嘔吐、下痢、便秘などの副作用が起こります。最近では、吐き気の副作用が強い抗がん剤を使う前には、制吐剤を点滴するなどして、できるだけ予防することが一般的です。

脱毛

毛母細胞がダメージを受けたことによって、髪の毛が抜けやすくなります。ただし一時的なものですので、治療後数ヶ月が経てば、また新たな髪の毛が生えてきます。

上記のほか、抗がん剤の種類によって手足のしびれや耳鳴りなどの神経症状が出ることもありますし、重篤な場合は肝臓や腎臓、心臓などの機能低下が起こることもあります。

いずれにせよ、化学療法を受けている途中や受けた後に気になる症状が現れた場合は、遠慮なく医師に相談することが大切です。

また最近では、正常な細胞にダメージを与えにくくした「分子標的薬」という新しいタイプの抗がん剤も登場しています。

分子標的薬とは?

 近年、副作用の少ない新たな抗がん剤として注目を集めているのが「分子標的薬」です。従来型の抗がん剤と異なり、がん細胞だけが持つ特異な物質などに狙いを定めた薬のため、正常な細胞に与える影響が少ないメリットがあります。

分子標的薬ってどんな薬?

 抗がん剤というと、副作用の強いイメージがありますが、それは薬のメカニズムに原因があります。

従来型の抗がん剤は、主にがん細胞の分裂スピードの速さに着目して作られているため、同じく分裂の活発な一部の正常な細胞にもダメージを与えてしまうのです。

一方、増殖のスピードではなく、がん細胞のみが持つ特徴に着目して作った薬が、分子標的薬です。がん細胞は分裂・増殖する際、ある特定のタンパクや酵素を産生することが、研究によって分かってきました。

分子標的薬はこれらの物質に働きかけるため、従来型の抗がん剤より正常な細胞にダメージを与えず、副作用が少なく済む点が大きなメリットです。

分子標的薬は、何を標的にするかによっていくつかの種類に分かれます。たとえば、がん細胞が増殖する際に新たな血管を作るのを妨害する「血管新生阻害薬」や、増殖の際のシグナル伝達を妨害する「シグナル伝達阻害薬」などが代表的です。

その他、人間の免疫システムを利用した「抗体薬」や、急性骨髄性白血病の治療に使われる「ビタミンA誘導体」など、分子標的薬には多くの種類が存在します。

肺がん治療に使われる分子標的薬

 肺がんの治療効果がある分子標的薬で、現在、国の認可を受けているものは以下の3つです。

ベバシズマブ(商品名アバスチン)

平成21年に承認された、新しい分子標的薬で、種類としては「血管新生阻害薬」に分類されます。

肺がんでは、扁平上皮がんを除く非小細胞がんのうち、手術のできないVB期とW期、もしくは再発時に、他の抗がん剤と組み合わせて使われることが一般的です。

ゲフィチニブ(商品名イレッサ)

「シグナル伝達阻害薬」の中でも、特にがん細胞の成長に関わる「チロシンキナーゼ」という酵素を阻害する分子標的薬です。手術不能の非小細胞がんに対して使われます。

エルロチニブ(商品名タルセバ)

ゲフィチニブと同様、チロシンキナーゼを阻害する分子標的薬です。手術不能の非小細胞がんに対して使われ、ゲフィチニブよりも延命効果が高いという報告がありますが、大きな差はないともいわれています。

いずれの分子標的薬も、骨髄抑制や吐き気などの副作用は少ないものの、間質性肺炎など、従来型の抗がん剤にはない副作用が現れる可能性もありますので、治療中は慎重な経過観察が必要です。

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